カガク De 暮らす

元研究者のゆるーいブログです。職業病により、家庭でもカガクしています。

天然物化学という壮大な宝探し 【ノーベル賞2015】

こんにちは、コガです。

育児にかまけてブログのほうが停滞していましたが、最近の嬉しいニュースを聞いて書かずにはいられません。

そう、ノーベル賞

ノーベル物理学賞を梶田先生が、
ノーベル医学生理学賞を大村先生が受賞することになりました。
おめでとうございます!

なかでも大村先生の研究は、微生物から有用成分を取る研究。この分野を「天然物化学」と言ったりするのですが、これは私が学生時代にやってたそのものなのです。

天然物、と聞くと、「天然記念物?」とか、「あのひと天然だよねー、の天然?」とかイメージされることが多いのですが、違います。
「天然由来成分」と言ったらイメージしやすいでしょうか?

どんな研究かというと…

①植物や菌から、
②有効成分があるかどうかテストして
③有効成分を抽出、分離して
④化学構造を決定する

というのがおおまかな流れです。

有効成分、というのは、例えば病原菌を殺す効果のあるものが見つかれば、抗生物質として医薬品になる可能性があります。ガンに効果があるものが見つかったら、抗癌剤に。
植物の病気に効果があるものが見つかったら、農薬になるかも。
他にも、お肌にイイ効果があるものが見つかったら、化粧品にもなります。
とにかく、医薬品から農薬、化粧品、食品、香料などなど、あらゆる分野で天然物化学が活躍しているのです。

この学問の面白いところは、身近な、どこにでもある土や川、植物などに、有効成分がゴロゴロ転がっているところです。
見つかった有効成分が新薬にでもなろうものなら、億単位のカネが動きます。
つまり、宝探しなのです。うふふ。
(カネでロマンを感じるのは卑しい私くらいかしら?)

とにかく、可能性を持った成分がまだ自然界にわんさか転がっている。
何十年も前からある「天然物化学」が、今でも現役で活躍している理由がここにあります。

特に近年では、③有効成分を抽出・分離 と、④化学構造を決定する の技術がものすごく進歩していて、すごく微量でも分離したり構造決定できるようになっています。
先人が見落としていたものも捕捉して、よりイイものを見つけることも可能なのです。

でも、そう簡単ではないのがこの研究。

●何に有効な成分を探すか?
●研究対象何にするか(菌か植物かその他か?)

に、経験や発想力、先見性、センスが求められます。

学生なんかが普通にやったら、結構な確率で既知化合物(昔の人がすでにとったやつ)が取れてしまいます。
先人たちもあの手この手で研究していますので、先人たちもびっくりするようなものを研究対象にしないと、新しい成分は得られないのです。

大村先生の場合は、有効成分をたくさん発見しましたが、その中には、家畜動物の病気に対する薬品があります。
大村先生は、ヒトに対する医薬品はみんな研究してるけど、家畜動物は研究されていないから、やることにした、とNHKのインタビューでお話されていました。この発想、着眼点が大村先生のすごいところで、ノーベル賞を受賞するに至った理由の1つなのではないでしょうか。

私の大学の先生も、「他人がやっていないこと(嫌がること)をやる」をモットーにして、馬糞とか牛糞をよく研究対象にしています。研究成果も出されており、多くの博士号取得者を輩出しています。(かなり面白い先生です。)

こんな、新たな発想(それも明確な根拠のある)が、革新的な発見・発明には重要なのですね。


天然物大好きっ子な私としては、もっともっと語りたいことがあるので、追々、記事にしたいと思います。
宝探しに興味があるひとは、どうぞ、楽しみにしていてくださいね。

大村智 - 2億人を病魔から守った化学者

大村智 - 2億人を病魔から守った化学者