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カガク De 暮らす

元研究者のゆるーいブログです。職業病により、家庭でもカガクしています。

「実験ノート」なるもの-第4回 新しい研究データ管理法

 

こんにちは、コガです。

前回は実験ノートの現実をお話しました。

実験の質や量によっては、旧来の実験ノートの書き方が全く合わないということがなんとなく分かっていただけたかと思います。

 

STAP問題では、「実験ノートが2冊しかなかった」とボリュームを指摘する方もいらっしゃいますが、実は前回お話した理由から、実験ノートを全く書かない研究者もいます。指摘すべきなのは、第三者がトレースできないようなデータ管理の仕方や情報の不足であって、実験ノートのボリュームを責めるのは少し筋違いなのではと思います。

私が危惧するのは、今回の問題を受けて、慌てて「実験ノートの書き方」の指導を強化することです。旧来の「正しい」方法を遵守するようにすれば当然、外部から文句が出る事はありませんが、効率面などで研究活動にマイナスになってしまう可能性があります。できれば、その研究室に合った「データ管理法」をちゃんと検討して、効率良く、研究活動にプラスになるようになってほしいと願います。

以下に、私なりの実験データ管理方法の案を、簡単ですが、書いていこうと思います。このお話は実際に研究している人でないとイメージがわかず、退屈になってしまうかもしれません。

なお、私自身しばらく研究現場から離れているのと、実績が無い、ということで、果たして本当に効率的かどうかは分かりませんが、ほんの一部でも参考にしてくださったり、ご意見をいただけると幸いです。

 

実験ノートは「操作ミス防止&作業の証拠残し」のためのログブックに

 

今までは、実験ノートが研究活動の全てでしたが、思い切って実験ノートは「ただのログブック」で、「生データ」と同じ扱いにしてしまってはいかがでしょう?という案です。

私は、研究活動で生み出されるデータをざっくり3つに分けて考えてみました。

 

①1次データ(生データ): 測定データや、測定時の条件、ログなどの情報。数字の羅列や画像一枚一枚で、それだけでは考察には至らず、グラフ化などの必要があるもの。

②2次データ: 生データを加工して、可視化したものを含む、いわゆる実験レポート。実験目的、結果、考察などの一連の思考過程。実験計画書も2次データに含む。

③3次データ: 複数の2次データが組み合わさった資料。報告会のプレゼン資料や、学術論文、研究データのデータベースなど。ひとつの研究成果となるもの。

 

今までは実験ノートというと①+②の扱いでしたが、これを①にしてしまおう、という提案です。
記載内容は、

 

  • 実験番号(後述)
  • 日付
  • プロトコール(実施したらチェックを入れるなどする)
  • 試薬、機器の情報
  • 測定条件
  • 測定データ(生データ)の所在(パソコン上ならパスやアドレス)
  • その他、実験中に起こったことのメモ

 

だけにします。プロトコールや機器の情報は、既に分かっていればPCで作って、プリントアウトしてノートに貼り付けても良いと思います。
なお、実験ノートの表紙には通し番号(実験ノート番号)と使用者の名前を、各ページにはページ数を書いておきます。
生データはできるだけプリントアウトしないようにします。重要なもののみプリントアウトして手元に置いておくといいでしょう。

 

↓実験ノートのサンプルとして、私の学生時代の実験をそれっぽく書いてみました。

f:id:ssca:20140605142508j:plain

一部分の抜粋ですし、「生データ」ですので、何のために何をやっているかは分からないと思います。情報不足があったらすみません・・・。

 

 実験番号をふって、データをリンク

旧式の「実験ノートの書き方」から「生データの貼り付け」を抜いたものにあたるものを私は「実験のまとめデータ」と名づけました。PCデータで、グラフを作成したり、考察したりする過程が含まれます。実験レポートとは別です。これは②の2次データにあたります。ここには以下の記述をします。

 

★ファイル名:実験番号

  • 実験責任者や実験者
  • 実験番号
  • 目的、研究背景など
  • 実験方法
  • 試薬などの情報は、重要なもののみ記載。
  • 結果
  • 考察
  • この実験が記載されている実験ノート番号とページ一覧

 

基本的に、このデータファイルを使ってディスカッションをするようにします
企業などでは、この他に実験計画書、報告書(レポート)が必要になると思います。

ポイントは実験番号。
実験の計画をした段階(実験計画書作成段階)で実験番号を発行して、その実験で得られる一連のデータを管理します。もちろん、実験番号は実験ノートにも記入し、この記述がどの実験番号の実験かわかるようにします。

さらに、③の3次データにも、実験番号を記録します。プレゼン資料などに使用したグラフが、どの実験番号のものかがわかり、だれでもソースを参照できるようにします。「コメント」や「メモ」機能でプレゼン資料内に書き込むと良いと思います。資料内に記述できない場合は、一覧表(目録)を別のファイルで作成し、管理するといいでしょう。ひと手間増えますが、データを管理する手間としてはそんなに大変なものではないと思います。

一通りの実例を示せれば分かりやすいのですが、結構な労力とボリュームになってしまいそうなので、もし機会があったらご紹介したいと思います。

 

データはみんなのもの!

 

今まででてきたデータは、共有のサーバなどに置いておき、研究室のメンバーが閲覧できるようにします。
誤編集を避けるために、Microsoft Officeであれば「最終版」などの機能を利用すると良いと思います。ひとつのファイルを共同で編集することもあると思います。複数のメンバーが同時にアクセスすることのないよう、ソフトウェアの設定に注意しましょう。また、このファイルは編集中なのか、最終版なのか、改訂版なのかをはっきりするようなファイル名をつけるようにしましょう。

 

フォルダやファイル名に情報を詰め込みすぎない

 

実験項目がさほど多くないときや、化合物名などでわかりやすくフォルダ管理ができる場合は気にしなくても大丈夫ですが、実験項目が多く、内容が多岐にわたる場合は、思い切ってフォルダやファイルに項目名をつけず、実験番号のみで管理するのもテです。
どういう事かというと、例えば、


フォルダ「酵素反応」→フォルダ「反応温度の検討」→フォルダ「酵素●●」→ファイル「実験番号○○反応温度○度〜○度、培地A」


のような感じで管理していたものを、


フォルダ「実験番号○〜○」→フォルダ「実験番号○○」→ファイル「実験番号○○」


のようにすることです。そして、実験番号と実験項目、実験概要を参照できるような一覧表を作っておきます。一覧表には、フォルダやファイル名に組み込みきれない内容も記入することができるし、ソートも簡単なので、検索効率はアップします。これもプラスひと手間にはなりますが、いちいち実験担当者にデータの所在を聞くよりは楽かなと思います
ちなみに、フォルダの階層数は、一般的に2階層くらいにすると、管理しやすいと言われています。

 

実験ノート電子化の波

 

最近は、実験ノートも含め、研究活動で排出されるデータをすべて電子化して管理しようという動きが活発になっているようです。
とりわけ厳密な管理が必要とされる大手製薬会社では、すでに実験ノートの電子化が導入されているそうですし、いくつかのソフトウェア開発会社から実験データ管理システムが開発されており、海外では実績も重ねられているそうです。
私は実際に見たことはありませんが、機会があったらぜひお勉強させてもらいたいと思います。どうやら、電子署名などの機能によって、高い信頼性が担保されGMPやISO、特許にも対応しているそうです。


導入にはコストと労力がかかりますので、小規模の研究室や大学などでは、完全電子化はもう少し先の話でしょうか。
でも、近い将来にはごく当たり前のことになっているかもしれませんね。

 

電子データの特許論争や品質管理への対応

 

アナログの実験ノートでもそうですが、これらの実験データが特許論争などに耐えうるには、発案日、実験日などの日付、発案者・実験者名、署名が必要になります。実験ノートでは手書きで残され、電子データであれば自動的にファイルに情報が刻まれることが多いです。
ただしこれだけでは完全ではありません。第三者機関(公証人)に証明を貰わなければなりません。これは今も昔も変わりありません。


Microsoft Officeでは、電子署名機能があり、信頼できる第三者機関に署名を登録しておき、その署名をファイルに埋め込めば、信頼性が確保できます(有料)。特許論争でこれが本当に有効なのか(多分大丈夫だとおもいますが)、私は知財関係の知識に乏しいので分かりません。その道のプロに聞きながら、データ管理法を構築していくことをお勧めします。

 

 

ということで、四回に分けて実験ノートの実際と実験データの管理について、お話してきました。
ご参考になりましたでしょうか?
少しでも様々な分野の多くの人に実際の研究現場を知っていただきたいということ、少しでも研究に携わる方の負担を減らしたいという願いを以て、書かせていただきました。

 

出産を控えて身動きのとれない元研究員のつぶやきが、何かしらのお役に立てると幸いです。

 

コガ

 

 

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