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カガク De 暮らす

元研究者のゆるーいブログです。職業病により、家庭でもカガクしています。

「実験ノート」なるもの-第1回 STAP問題に触れてみる

 

 

こんにちは、コガです。

今回は突然ですが「実験ノート」について思うところを綴ります。

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 私は研究職に身を置いていたという理由から、STAP問題について聞かれることがよくあります。私は中の人ではありませんし、一部の報道しか見ておらず全貌を把握しているわけではありませんので、当問題についての正否を述べられる立場ではありません。(当ブログでもこれについてはコメントしません)。

ただ、言えることは、STAP問題で指摘された「研究データ管理のずさんさ」については耳が痛い思いをしている人、結構いるのではないでしょうか?ということです。

メディアに対して「自分もずさんな管理してます!」なんて言う人はまずいないでしょう。「こんなずさんさ、同業者として信じられない!」と言うより仕方ありません。「自分はちゃんと管理できている!」という人の中にも、そう信じているだけで管理不十分な方がいるかもしれません。

今回の騒動でドキドキしている方、ちゃんと管理しているつもりでも、実は管理しきれていない方、理系の学生さん、それから、専門外だけどちょっと興味のある方に、ぜひ「研究データの管理」のことを知ってもらえたらなと思っています。

そして、データ管理の方法に、「正しい方法」はありません。組織やデータの質によって適切な方法は異なります。ぜひ様々なご意見を頂けたらと思います。

(実は私、こっそり「研究データ管理の効率化を促進する活動」を行っています。)

 

 

まずはSTAP問題に触れてみる

 

あまり触れたくはありません。というのも、先ほども書きましたが、私は外部の人間なので、正しい情報を十分得られているわけではないからです。多分、街頭でインタビューされても、「さぁ?どうなんでしょうね?内情を知らないので私には何とも言えません」としか言えない気がします。

しいて触れるなら、今回の問題にはいくつかの論点があって、それが報道でも、小保方氏の中でもごっちゃになっているということ。

少し整理してみましょう。

 

STAP問題でなにが問題なのかというと・・・、

STAP細胞は本当にできたのか?」ではありません。これは私たちにとって一番気になるところですが、これは学術論文が正しく公開されたとしても、その論文を受けて専門家たちが検証実験をしたり議論をしたりしながら、最終的に実用化されるまで、厳密には結論が出せないことです(と私は思っています)。

STAP細胞ができた」ということを「示唆」するデータが出た時点で論文が提出される、つまり、「たぶんこれ、STAP現象だよね?みんな見てよ!どうかな?」というのが論文です。ですから、他の科学者が学術論文を見て、「この論文の言い分はちょっと違うよね」ということはよくあります。

 で、話をもとに戻して、STAP問題で何が問題なのかというと、

1) 論文作成時に誤ったデータを掲載したこと、データの切り貼りを(編集)したこと。

2) (1)を受けて、本来起こり得ない現象を作り出すなどの悪意があったかどうかの調査のために元のデータをみたが、小保方氏にしか理解できないようなデータ管理であったために、第三者にはデータのトレースが出来ず、悪意があったかどうかも判断できなかった(ようだ)。

 ということでしょう。

 (1)は小保方氏本人の問題ですが、(2)はどの研究機関でも頭を悩ます問題です。

理研の会見でもコメントしていましたが、研究データは「膨大」です。

一日に何十枚と顕微鏡写真が出たり、何百の解析データを比較したり処理しなくてはならないことはザラにあります。これをまとめ、すべてを管理するにはかなりの労力がかかります。しかも、何よりも、「研究データ管理」には決まりが無い→教育される機会がない、ということです。たいていの場合、組織ごとに独自で行っているのです。

この問題の後、理研でもあちこちの大学でも、データ管理については「十分な教育がなされる必要がある」のようなコメントを聞きます。つまり、今までデータ管理の教育が不足しているという認識を持っているということです。

データ管理のキーパーソンになるのはやはり「実験ノート」です。STAP問題でも、実験ノートが2冊しかなかったとか、日付がない等の報道があり、実験ノートというワードが知れ渡りました。

 

実験ノートってなに?

そもそも実験ノートってなに?学校の授業とかでとっていたノートとどうちがうの?実験したことをかけばいいんじゃないの?という方もいらっしゃると思います。

 

実験ノートというのは、学校の授業で使用するノートとは全く質が異なります。

簡単に言うと、

「実験の証拠であり、その組織(ひいては全世界の科学技術)の財産となるべきもの」です。

どういうことを書くかというと、

「いつ、だれがどのような実験をし、どのような結果が得られたか。」という内容を、「第三者が実験ノートに従って実験したら、同じ結果が得られる(再現性の確保)」レベルで書きます。また、特許論争や内容の信頼性確保のために、「改ざんできない形で」書きます。

ちなみに、ちゃんと実験ノートをつけたら、業務の半分は実験ノート作成で終わってしまうくらい労力のいることです。(これは大問題なので、現在実験ノートの有り方について、電子化などの大きな変革が起こりつつあります。)

 

漠然としていていまいちピンとこないかもしれません。

次回からこの「実験ノート」を中心に解説していきたいと思います。

理系の学生さんはもちろん、実験ノートを書くのが苦手、書き方を知らない方に参考にしていただければと思います