カガク De 暮らす

元研究者のゆるーいブログです。職業病により、家庭でもカガクしています。

失敗ナシで美味しいカルボナーラを作る方法!…の構築②

 

こんばんは、コガです。

ご無沙汰していました、長編シリーズ「失敗ナシで美味しいカルボナーラを作る方法!…の構築」です。

 

・家で美味しいパスタ料理を作る!

・特別な素材や技術を必要としない

・チビっこたちの世話の合間でもつくれる

 

を目標に、カルボナーラ研究に捧げた悪戦苦闘の日々を綴ります。

 

<本日のお品書き>

 先行調査(レシピの研究)

 ・参考レシピA

 ・参考レシピB

 ・伝統的なレシピ

 ・プロのレシピ

 ・my標準レシピ

 

研究に取り掛かる前に、既に公開されているレシピをよく調べてみましょう。先行調査、というやつです。

 

まずは自分が今まで失敗してきた歴史をふりかえりながら、参考にしてきたレシピを比較してみます。

だいぶ昔のことで、出どころをメモしていなかったので記憶している限りを書きます。

 

 

●●●●参考レシピA (1人前)●●●●

パスタを茹で始める

 ↓
フライパンでベーコンと具材適量を炒める。
牛乳50ccとチーズ15gを入れてチーズが溶けるまであたためる。
少し冷ましてから全卵を入れて混ぜ合わせる(余熱でとろりとなるまで)

 ↓
茹で上がったパスタをフライパンのソースと絡めて、胡椒をふって出来上がり

 

 

ソースを作っておいて→旦那が帰ってくる時間に合わせてパスタを茹でて→ソースを温め直して→パスタとからめて食べよう、と思っていたのが大間違いでした。

フライパンをとろ火でそーっと温めようとしたらチーズが溶ける前にフライパンの一部が高温になってあっという間に卵が固まり始めてしまいました。

 

「失敗無し!」を謳っているレシピには「火を止めてからすこし冷まして卵黄を入れる」「冷たいソースに卵を入れて、火をかけ、卵が固まらないうちに火から上げる」など、様々な工夫が見られましたが、今回の一件で「余熱」とか「湯煎」とか「絶妙なタイミングで火から上げる」にすっかり自信をなくしてしまいました。

言い訳すると、だって、フライパンの厚さとか、一度に作る量によって、「余熱」の具合も「湯煎」の具合も変わってくるじゃないか!

 

とにかく私には余熱とか湯煎(湯気)は無理だ!

 

そんなとき、「卵黄をラストに絡めるだけ」という、レシピを発見しました。

 

 

●●●●参考レシピB●●●●

パスタを茹で始める
 ↓

フライパンでベーコン適量を炒める。
生クリーム100ccとチーズ15gをいれて、チーズが溶けるまでよくまぜる。火を止めておく。

 ↓
パスタがゆであがったら、フライパンでソースとからめて、卵黄1個を入れる

 ↓
黒胡椒をふって出来上がり

  

さて、上記のレシピ通りに作ってみたところ、うまくできたかどうか、というと…

 

1勝2敗。

 

少なくとも卵が固まってしまうことはありませんでした。

とろとろ濃厚でうまくできたかと思うと(1勝)、同じように作っているつもりでも、なんだかソースのとろみがなくてシャバシャバのスープスパゲティみたいになったり(1敗目)、ソースをすっかり吸ってボテボテになったり(2敗目)してしまったのです。

 

ちなみに、ネットで見かけたレシピには、卵黄だったり全卵だったり、牛乳だったり生クリームだったり、チーズは本格的なパルミジャーノや、粉チーズ、6ピーチーズ、スライスチーズなど、様々な材料のバリエーションがありました。

手順から材料から、あまりにも色々すぎて、なにが失敗原因なのか、どうしたらうまくいくのか、そもそも、これらのレシピって本当に美味しいのか、疑心暗鬼状態。 

 

悩みに悩んでいるとき、コンビニで見つけた雑誌「BISTRO男子 volume1 パスタを極める!」表紙にはでかでかと美味しそうなカルボナーラの写真が。

思わず衝動買いです。

この雑誌では、2通りのカルボナーラレシピを紹介していました。

 


●●●●伝統的なレシピ●●●●

 

クラシックなカルボナーラのソースは、豚肉(熟成肉)、卵、チーズ、黒胡椒からできたシンプルなものだそうで、よくカルボナーラに使われているイメージがある、生クリームは入っていないのですね。

【鍋】湯を沸かす(パスタ一人前につき1リットル、塩濃度1%)


【フライパン】肉(グアンチャーレ、豚の塩漬け熟成肉)40gをオリーブオイルで炒める。弱火でじっくりと、豚の脂を出すように。
 ↓

火を止め、沸騰したお湯を30ccほど入れ焦げ付きを溶かすようにまぜる。


【鍋】パスタをゆではじめる。1人前。


【ボウル】卵2個を泡立て器で溶きほぐす。おろしたチーズ(ペコリーノロマーノ)30gを加え、湯煎(茹で湯の湯気)にあてながらで泡立てる。もったりしたらOK。

 ↓
フライパンの肉と汁が60度くらいまで冷めたら、ボウルにいれてまぜる。

 ↓

パスタがゆであがったら、ボウルでソースとからめて、黒胡椒をふって完成!

 

 

もう1つのレシピは、「今時のカルボナーラ」として、生クリームを使ったプロレシピです。

 

 

●●●●プロのレシピ●●●●

 

【鍋】お湯を沸かす。(上レシピと同様)
 ↓

パスタをゆではじめる。1人前。

 

【フライパン】肉(パンチェッタ)30gをオリーブオイルで炒め、弱火でじっくりと脂を出す。

 

【ボウル】チーズ(パルミジャーノ・レッジャーノ)30gと卵黄2個と生クリーム(入脂肪分36%)100ccをよくまぜる。


【フライパン】火を止め、白ワイン大さじ3をいれる。
 ↓

これが60度程に冷めたら、ボウルのソースをフライパンに注ぎ、混ぜ合わせる。
 ↓

湯煎(湯気)にかけながらよくまぜる。

 ↓
フライパンに、茹で上がったパスタとゆで汁30ccほどを入れ、湯煎のままとろりとするまでまぜる。

 ↓
黒胡椒をふって出来上がり。

 

できるかッ!!

 

と言いながらも実はこの複雑なレシピ、試してみたのです。肉はベーコン、チーズはパルメザンチーズ(粉チーズ)を使って。
でも私の力では撃沈。フライパンが厚いからか、いくら湯気にあててもとろりとしないしチーズは溶けない。そーっと火にかけたら、当然のことながら卵が固まってボソボソ。

 

プロ仕様の器具、材料と、プロの厳密な時間管理と温度管理が求められる難しいレシピなのです。

そもそもペコリーノロマーノとか、グアンチャーレなんてスーパーに無いし高いし!

 

失敗を重ね、

 

そして旦那から1言。
「研究しなよ。(本業でしょ?)」

 

そういえばそうだった(当時研究職)。

この際、ちゃんと研究しよう。
食材、手順、をちゃんと比較検討して、実験して、考察する。

 

まずは、ベースとなるレシピ(my標準レシピと名づけました)を決めました。それから、各ステップの問題点をひとつずつ検討、考察し、解決する方法を考えていきます。

 

 

●●●●my標準レシピ●●●●

 

【フライパン】オリーブオイル大さじ1、ベーコンスライス1パック分(30-35g、適当な大きさに切る)をフライパンに入れ、火をつける。弱火でじっくりとカリッと焼く。

酒大さじ1を入れ、軽くアルコール分を飛ばして、生クリーム100ccとスライスチーズ1枚半を入れる。

チーズが溶けたら火を止めておく。

 ↓

しばらく放置(ダンナの帰りを待ったり、他の料理を作るなど。)

 ↓

【鍋】1人前につき水1Lと塩(量は今後検討)を鍋に入れ、お湯を沸かす。

パスタを入れ、パッケージの表示時間通りに茹でる。

 ↓

【皿】盛り付けるお皿に卵黄1個を割り入れておく。コショーもふっておく

 ↓

【フライパン】茹で上がりの少し前(2分前くらい)に、フライパンのパスタソースをひと煮立ちさせる。

パスタのゆで汁大さじ2程度をソースに加える。

ソースがひと煮立ちしたら火を止めておく。

 ↓

パスタが茹で上がったら、トングなどでフライパンにうつし、ソースをからめる。火はつけない。

 ↓

卵黄とコショーが入ったお皿にうつし、ひと混ぜして完成。

 

 

ここから、それぞれの手順・材料をいろいろいじって精査していきます。

 

やっとスタートライン。

次回は「パスタを茹でる操作」からじっくり実験していきます。

 

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ペコリーノ・ロマーノ 約500g

ペコリーノ・ロマーノ 約500g

天然物化学という壮大な宝探し 【ノーベル賞2015】

こんにちは、コガです。

育児にかまけてブログのほうが停滞していましたが、最近の嬉しいニュースを聞いて書かずにはいられません。

そう、ノーベル賞

ノーベル物理学賞を梶田先生が、
ノーベル医学生理学賞を大村先生が受賞することになりました。
おめでとうございます!

なかでも大村先生の研究は、微生物から有用成分を取る研究。この分野を「天然物化学」と言ったりするのですが、これは私が学生時代にやってたそのものなのです。

天然物、と聞くと、「天然記念物?」とか、「あのひと天然だよねー、の天然?」とかイメージされることが多いのですが、違います。
「天然由来成分」と言ったらイメージしやすいでしょうか?

どんな研究かというと…

①植物や菌から、
②有効成分があるかどうかテストして
③有効成分を抽出、分離して
④化学構造を決定する

というのがおおまかな流れです。

有効成分、というのは、例えば病原菌を殺す効果のあるものが見つかれば、抗生物質として医薬品になる可能性があります。ガンに効果があるものが見つかったら、抗癌剤に。
植物の病気に効果があるものが見つかったら、農薬になるかも。
他にも、お肌にイイ効果があるものが見つかったら、化粧品にもなります。
とにかく、医薬品から農薬、化粧品、食品、香料などなど、あらゆる分野で天然物化学が活躍しているのです。

この学問の面白いところは、身近な、どこにでもある土や川、植物などに、有効成分がゴロゴロ転がっているところです。
見つかった有効成分が新薬にでもなろうものなら、億単位のカネが動きます。
つまり、宝探しなのです。うふふ。
(カネでロマンを感じるのは卑しい私くらいかしら?)

とにかく、可能性を持った成分がまだ自然界にわんさか転がっている。
何十年も前からある「天然物化学」が、今でも現役で活躍している理由がここにあります。

特に近年では、③有効成分を抽出・分離 と、④化学構造を決定する の技術がものすごく進歩していて、すごく微量でも分離したり構造決定できるようになっています。
先人が見落としていたものも捕捉して、よりイイものを見つけることも可能なのです。

でも、そう簡単ではないのがこの研究。

●何に有効な成分を探すか?
●研究対象何にするか(菌か植物かその他か?)

に、経験や発想力、先見性、センスが求められます。

学生なんかが普通にやったら、結構な確率で既知化合物(昔の人がすでにとったやつ)が取れてしまいます。
先人たちもあの手この手で研究していますので、先人たちもびっくりするようなものを研究対象にしないと、新しい成分は得られないのです。

大村先生の場合は、有効成分をたくさん発見しましたが、その中には、家畜動物の病気に対する薬品があります。
大村先生は、ヒトに対する医薬品はみんな研究してるけど、家畜動物は研究されていないから、やることにした、とNHKのインタビューでお話されていました。この発想、着眼点が大村先生のすごいところで、ノーベル賞を受賞するに至った理由の1つなのではないでしょうか。

私の大学の先生も、「他人がやっていないこと(嫌がること)をやる」をモットーにして、馬糞とか牛糞をよく研究対象にしています。研究成果も出されており、多くの博士号取得者を輩出しています。(かなり面白い先生です。)

こんな、新たな発想(それも明確な根拠のある)が、革新的な発見・発明には重要なのですね。


天然物大好きっ子な私としては、もっともっと語りたいことがあるので、追々、記事にしたいと思います。
宝探しに興味があるひとは、どうぞ、楽しみにしていてくださいね。

大村智 - 2億人を病魔から守った化学者

大村智 - 2億人を病魔から守った化学者

自由研究に困ったらどうぞ2 ー1日でできるテーマ編

こんばんは、コガです。

 

夏休みもあと残すこと数日。
やりました?自由研究。
え?やってない?

 

大丈夫、頑張れば1日でできます!

 

去年は自由研究のきっかけ作りになればと、こんな記事を書きました。
↓↓

自由研究に困ったらどうぞ。(自由研究を始めるきっかけ作りに) - カガク De 暮らす

 

思いの外読んでくださる方が多かったので、
今回はより具体的に、「どんなふうにテーマを決めて、どんなふうに展開していくか」を書いてみたいと思います。

そして、今回は「1日でもできる」「家をでなくてもできる」「オリジナリティある」テーマを考えてみましたので、参考にしていただければと思います。

 


1日で自由研究しちゃう極意
「分類と統計とグラフ化」


あぁ難しそう!と思われるかもしれませんが、難しいことはありません。

テーマは家にあるものだったらなんでもOK。
◆家にある服の素材
◆食材と調味料の種類
◆壁紙や家具の色
取りあえず目についたものでOKです。

理科にこだわらなくてもいいのです。

 

ここでは、「家にある服の素材」をテーマにして解説していきます。


自由研究の進め方の大まかな流れは、、


①まず、分類します。
下着類、シャツ、アウター、冬物、親のもの、自分のもの、など

 

②次に統計をとります。
お洋服についているタグを見て、ポリエステルが何パーセント、綿が何パーセント、シルクが何パーセント、毛が何パーセント、などなどのデータを集めていきます。

家にあるすべての衣類のデータを集めてもいいですが、下着類・ティーシャツ・冬ものアウター等、各分類のものそれぞれ5枚を無作為(ランダム)に選択するってのもありだと思います。

 

③そして、グラフ化します。
下着類…合計(または平均)すると綿が○%、ポリエステルが○%
アウター…毛が○%、ナイロンが○%
など。
この場合は円グラフにまとめると良さそうですね。

 

④最後に考察します。
内に着るもの(インナーやシャツ)はどういう素材が多く、冬物のアウターにはどういう素材がおおいか。それはなぜか。汗を吸うとか、肌触りとか、保温、保湿とかの観点から考えてまとめてみるといいと思います。

 

これでおしまい。


家を一歩も出ずに済みます。
もっと踏み込むなら、図書館で布の性質を学べる本を探すとか、洋服屋さんに直接インタビューしてみるとかもいいですね。

 

以下に、各ステップをもうちょっと詳しく説明します。


分類のコツ

どのように分類するかが一番のポイントです。

下着といっても親のステテコもあれば自分のパンツもあります。夏用の下着もあれば、冬用のもこもこした下着もあります。これを分けるか否か。

下着の中でも、パンツ・タンクトップ・親の・自分の・トランクス・ブリーフを全部分けると、とてつもない分類の数になってしまいます。すると、統計が取れなかったりまとめるのが面倒だったり、研究発表を聴く人が混乱したりします。

「分類」はセンスと経験が求められるかもしれません。そしてこれが、研究の質を左右します。もちろん、自由研究はお勉強の一環。完璧でなくてもいいので、自分で考えてやってみることが大切です。

 

以下に私が考えた分類例を書いておきます。

f:id:ssca:20150826225934j:plain

 


統計のコツ

分類ができてしまえば、あとは分類にしたがって情報(タグに書いてある綿とかナイロンとかの数値)を集めればOKです。表を作って、メモしていくといいでしょう。

上にもかきましたが、どれくらいの量の情報を集めるかは自分で決めます。家にある服全部にするか、各分類5着くらいにするか。でも少なすぎると、統計になりませんので注意が必要です。

各分類で何枚調べたか、という情報もちゃんと記録しておきましょう。3着の平均より、10着の平均のほうが信頼性は高いです。

研究結果を見る人は、何着調べて得られた結果か?この結果はどれくらい信頼性があるのか?を知りたがるはずです。

 

 

グラフ化のコツ

グラフは見せ方がポイントです。

1回、メモ用紙にざっくりとグラフを作って、眺めてみましょう。なにか分かることがあると思います。この分類は綿が多いなぁとか、こっちの分類は色んな素材が混ざってるなぁ、とか。

そうしたら、その事実をわかりやすく伝えられるように、統計データのなかから必要なものを選択してグラフを作ります。

どのデータを選択するか。これもセンスです。

 

例えば親の服と自分の服を比較するなら、親の服の全分類の平均と、自分の服の全分類の平均を持ってきて、並べてグラフにします。

すると、そこに、自分がこの研究をして気づいたこと(得られた研究結果)が現れてきます。

 

グラフというのは、勝手にできるものではなくて、「自分の考えを伝えるために意図的につくるもの」なのです。

あ、もちろん、データ自体を変えてはいけませんよ!あくまでも、データの使い方の問題です。

 

いざグラフを作ろうとしても、グラフには棒グラフ、折れ線グラフ、円グラフ…など、色々あって、どれにしたらいいか悩んでしまいますよね。

実は研究者さんも悩むことが結構あります。あれこれ試してみて、一番見やすく、伝わりやすいものを選ぶといいと思います。

 

グラフの作り方、見せ方については、いつか特集記事にしたいなと思います。すごく奥が深くて、面白いんです!

「間違ってはいないけど、すごく作り手の意図が強くて、気をつけて見ないと騙される!」というグラフもよく見かけます。

 

 

考察のコツ

グラフ化する時点で、すでに何かに注目してデータを選んでいますよね。例えば冬服と夏服の違い。冬服のほうが暖かく感じる素材が多くなるだろうな、と予想して、グラフ化しているはずです。
考察では、そのことを素直に書けばいいのです。「冬服でこの素材が多く使われている。これはこの素材が保温性が高いからだろう。」
中には意外だったことや知らなかったこともあるかもしれません。その時は、それはなぜだかを考えて書いてみましょう。
「自分の服より親の服にはシルクが多かった。シルクはつややかで綺麗だから、ドレスやスーツなど、大人の服に多いのかもしれない」
わからないことは大人にインタビューしてもいいと思います。
「母に聞いてみたところ、シルクは傷つきやすいため、着るときには気を使うらしい。普段から動き回る子供の服には向いていないから、自分の服にはすくなかったのかもしれない」

さらに、この研究結果がどのようなことに活かせるかを考えてみましょう。

 

ちなみに、本やネットで調べれば、それぞれの繊維の構造とか性質も知ることができます。それも併記すればよりパワーアップしますね。無くても十分だと思います。

 


自由研究を始める前に・・・

プロの科学者さんは、
テーマを決める時に、すでに、
「こんなふうにに研究をすすめたら、どんな結果が得られてどんな考察ができて、次にどんな研究に繋げられるか」の一通りのながれ全部をだいたいシミュレーションしています。
「とりあえずやってみる」ではないのです。
研究を始める前に、終わりまでをちゃんとイメージしておけば、途中でわけがわからなくなったり、データが中途半端で足りなかったり、結論が出なかったりすることがありません。

自由研究も、頭の中で(もしくはメモ帳のうえで)ちゃんと自由研究を終わらせてから、実際に取りかかるようにしましょう。

それさえできていれば、あとは手を動かすだけ。一日でできますよ。

 

 

最後に・・・

 

夏休みになると、自由研究に、といって色々なところで理科実験教室や体験学習、調べもの学習が開催されます。このような、オトナが用意した機会を利用して学習するのも素晴らしいことですが、私個人的には、簡単な題材でいいので「ゼロから自分で考えて作り上げていく」ということの面白さ、難しさを経験して、頭を思いっきり動かしてほしいなと願っています。

子供ならではの視点・発想で、オトナのドギモを抜くような自由研究を期待しています!

 

 

 

 

 

 

「実験ノート」なるもの-第4回 新しい研究データ管理法

 

こんにちは、コガです。

前回は実験ノートの現実をお話しました。

実験の質や量によっては、旧来の実験ノートの書き方が全く合わないということがなんとなく分かっていただけたかと思います。

 

STAP問題では、「実験ノートが2冊しかなかった」とボリュームを指摘する方もいらっしゃいますが、実は前回お話した理由から、実験ノートを全く書かない研究者もいます。指摘すべきなのは、第三者がトレースできないようなデータ管理の仕方や情報の不足であって、実験ノートのボリュームを責めるのは少し筋違いなのではと思います。

私が危惧するのは、今回の問題を受けて、慌てて「実験ノートの書き方」の指導を強化することです。旧来の「正しい」方法を遵守するようにすれば当然、外部から文句が出る事はありませんが、効率面などで研究活動にマイナスになってしまう可能性があります。できれば、その研究室に合った「データ管理法」をちゃんと検討して、効率良く、研究活動にプラスになるようになってほしいと願います。

以下に、私なりの実験データ管理方法の案を、簡単ですが、書いていこうと思います。このお話は実際に研究している人でないとイメージがわかず、退屈になってしまうかもしれません。

なお、私自身しばらく研究現場から離れているのと、実績が無い、ということで、果たして本当に効率的かどうかは分かりませんが、ほんの一部でも参考にしてくださったり、ご意見をいただけると幸いです。

 

実験ノートは「操作ミス防止&作業の証拠残し」のためのログブックに

 

今までは、実験ノートが研究活動の全てでしたが、思い切って実験ノートは「ただのログブック」で、「生データ」と同じ扱いにしてしまってはいかがでしょう?という案です。

私は、研究活動で生み出されるデータをざっくり3つに分けて考えてみました。

 

①1次データ(生データ): 測定データや、測定時の条件、ログなどの情報。数字の羅列や画像一枚一枚で、それだけでは考察には至らず、グラフ化などの必要があるもの。

②2次データ: 生データを加工して、可視化したものを含む、いわゆる実験レポート。実験目的、結果、考察などの一連の思考過程。実験計画書も2次データに含む。

③3次データ: 複数の2次データが組み合わさった資料。報告会のプレゼン資料や、学術論文、研究データのデータベースなど。ひとつの研究成果となるもの。

 

今までは実験ノートというと①+②の扱いでしたが、これを①にしてしまおう、という提案です。
記載内容は、

 

  • 実験番号(後述)
  • 日付
  • プロトコール(実施したらチェックを入れるなどする)
  • 試薬、機器の情報
  • 測定条件
  • 測定データ(生データ)の所在(パソコン上ならパスやアドレス)
  • その他、実験中に起こったことのメモ

 

だけにします。プロトコールや機器の情報は、既に分かっていればPCで作って、プリントアウトしてノートに貼り付けても良いと思います。
なお、実験ノートの表紙には通し番号(実験ノート番号)と使用者の名前を、各ページにはページ数を書いておきます。
生データはできるだけプリントアウトしないようにします。重要なもののみプリントアウトして手元に置いておくといいでしょう。

 

↓実験ノートのサンプルとして、私の学生時代の実験をそれっぽく書いてみました。

f:id:ssca:20140605142508j:plain

一部分の抜粋ですし、「生データ」ですので、何のために何をやっているかは分からないと思います。情報不足があったらすみません・・・。

 

 実験番号をふって、データをリンク

旧式の「実験ノートの書き方」から「生データの貼り付け」を抜いたものにあたるものを私は「実験のまとめデータ」と名づけました。PCデータで、グラフを作成したり、考察したりする過程が含まれます。実験レポートとは別です。これは②の2次データにあたります。ここには以下の記述をします。

 

★ファイル名:実験番号

  • 実験責任者や実験者
  • 実験番号
  • 目的、研究背景など
  • 実験方法
  • 試薬などの情報は、重要なもののみ記載。
  • 結果
  • 考察
  • この実験が記載されている実験ノート番号とページ一覧

 

基本的に、このデータファイルを使ってディスカッションをするようにします
企業などでは、この他に実験計画書、報告書(レポート)が必要になると思います。

ポイントは実験番号。
実験の計画をした段階(実験計画書作成段階)で実験番号を発行して、その実験で得られる一連のデータを管理します。もちろん、実験番号は実験ノートにも記入し、この記述がどの実験番号の実験かわかるようにします。

さらに、③の3次データにも、実験番号を記録します。プレゼン資料などに使用したグラフが、どの実験番号のものかがわかり、だれでもソースを参照できるようにします。「コメント」や「メモ」機能でプレゼン資料内に書き込むと良いと思います。資料内に記述できない場合は、一覧表(目録)を別のファイルで作成し、管理するといいでしょう。ひと手間増えますが、データを管理する手間としてはそんなに大変なものではないと思います。

一通りの実例を示せれば分かりやすいのですが、結構な労力とボリュームになってしまいそうなので、もし機会があったらご紹介したいと思います。

 

データはみんなのもの!

 

今まででてきたデータは、共有のサーバなどに置いておき、研究室のメンバーが閲覧できるようにします。
誤編集を避けるために、Microsoft Officeであれば「最終版」などの機能を利用すると良いと思います。ひとつのファイルを共同で編集することもあると思います。複数のメンバーが同時にアクセスすることのないよう、ソフトウェアの設定に注意しましょう。また、このファイルは編集中なのか、最終版なのか、改訂版なのかをはっきりするようなファイル名をつけるようにしましょう。

 

フォルダやファイル名に情報を詰め込みすぎない

 

実験項目がさほど多くないときや、化合物名などでわかりやすくフォルダ管理ができる場合は気にしなくても大丈夫ですが、実験項目が多く、内容が多岐にわたる場合は、思い切ってフォルダやファイルに項目名をつけず、実験番号のみで管理するのもテです。
どういう事かというと、例えば、


フォルダ「酵素反応」→フォルダ「反応温度の検討」→フォルダ「酵素●●」→ファイル「実験番号○○反応温度○度〜○度、培地A」


のような感じで管理していたものを、


フォルダ「実験番号○〜○」→フォルダ「実験番号○○」→ファイル「実験番号○○」


のようにすることです。そして、実験番号と実験項目、実験概要を参照できるような一覧表を作っておきます。一覧表には、フォルダやファイル名に組み込みきれない内容も記入することができるし、ソートも簡単なので、検索効率はアップします。これもプラスひと手間にはなりますが、いちいち実験担当者にデータの所在を聞くよりは楽かなと思います
ちなみに、フォルダの階層数は、一般的に2階層くらいにすると、管理しやすいと言われています。

 

実験ノート電子化の波

 

最近は、実験ノートも含め、研究活動で排出されるデータをすべて電子化して管理しようという動きが活発になっているようです。
とりわけ厳密な管理が必要とされる大手製薬会社では、すでに実験ノートの電子化が導入されているそうですし、いくつかのソフトウェア開発会社から実験データ管理システムが開発されており、海外では実績も重ねられているそうです。
私は実際に見たことはありませんが、機会があったらぜひお勉強させてもらいたいと思います。どうやら、電子署名などの機能によって、高い信頼性が担保されGMPやISO、特許にも対応しているそうです。


導入にはコストと労力がかかりますので、小規模の研究室や大学などでは、完全電子化はもう少し先の話でしょうか。
でも、近い将来にはごく当たり前のことになっているかもしれませんね。

 

電子データの特許論争や品質管理への対応

 

アナログの実験ノートでもそうですが、これらの実験データが特許論争などに耐えうるには、発案日、実験日などの日付、発案者・実験者名、署名が必要になります。実験ノートでは手書きで残され、電子データであれば自動的にファイルに情報が刻まれることが多いです。
ただしこれだけでは完全ではありません。第三者機関(公証人)に証明を貰わなければなりません。これは今も昔も変わりありません。


Microsoft Officeでは、電子署名機能があり、信頼できる第三者機関に署名を登録しておき、その署名をファイルに埋め込めば、信頼性が確保できます(有料)。特許論争でこれが本当に有効なのか(多分大丈夫だとおもいますが)、私は知財関係の知識に乏しいので分かりません。その道のプロに聞きながら、データ管理法を構築していくことをお勧めします。

 

 

ということで、四回に分けて実験ノートの実際と実験データの管理について、お話してきました。
ご参考になりましたでしょうか?
少しでも様々な分野の多くの人に実際の研究現場を知っていただきたいということ、少しでも研究に携わる方の負担を減らしたいという願いを以て、書かせていただきました。

 

出産を控えて身動きのとれない元研究員のつぶやきが、何かしらのお役に立てると幸いです。

 

コガ

 

 

実験ノート」なるもの-第1回 STAP問題に触れてみる - 元リケジョがママになりました。

「実験ノート」なるもの-第2回 実験ノートってなに? - 元リケジョがママになりました。

「実験ノート」なるもの-第3回 「実験ノートの書き方」の理想と現実 - 元リケジョがママになりました。

「実験ノート」なるもの-第4回 新しい研究データ管理法 - 元リケジョがママになりました。

「実験ノート」なるもの-第3回 「実験ノートの書き方」の理想と現実

 

 

こんにちは、コガです。

今回は、「実験ノートの書き方」について個人的に思うところを書きます。

今回はドキドキハラハラしながらアップします。というのも、私は権威ある大学の先生でも大企業の役職つきの偉い方でもなんでもなく、ただの変なリケジョです。そんな私が、偉そうに「今まで教わった実験ノートの書き方は実務に合わないと思います!」という内容のことを書いてしまうのですから。

でも、この際ですので、臆することなく意見をし、忌憚なきご意見をいただき、ディスカッションできたらと思います。きっとこのことが、これからの研究現場にプラスになることを願っています。

 

「正しい(とされてきた)実験ノートの書き方」について

 

前回、実験ノートはどういうものかを書きましたが、そのうえさらに「実験ノートはこうであるべき」というものが、多くの先生方から提唱されています。

 

・各実験ごとに、実験タイトル、目的、方法、結果(生データや解析データ(グラフなど)、考察を全て記入。実験の発想から考察に至るまでをすべて。

・実験ノートは、実験のすべてを語り、これを以って議論ができるようであることが望ましい。

・一連の実験が分断しないように記入。

・高い検索性を確保するために、目次を作成したり、実験ノート間での目録を作成することも重要。

・時系列で記入。実施したらすぐ記入(別のメモ帳にメモしておき、後でまとめる、ということはしない)

 

なるほど、きちんと書けるように頑張ろう、と思えるような理想的な内容だと思います。私が企業に入社して初めの研修のときにも、OJTのときにも、先輩社員にもこのように教わりました。製薬企業の安全性の部署で、GLP*1に関わっていたので、結構厳密に行っていたと思います。上手に、完璧にノートが書けるようになると誇らしく思ったものです。

でも、おかしな点もちらほら。

まず、実験ノートをちゃんと書くための予備実験を重ねるということ。それから、ノートのほとんどが、プリントアウトしたデータの貼り付けと割り印だらけ、ということ。さらに、ちゃんと書いた実験ノートを振り返って議論するということがない、ということ。

転職してバイオ系の新規プロジェクトに配属され、研究室の立ち上げから参加したときには、また別の困難にぶつかりました。その研究室は小規模の割に手広くて、一人で3~4テーマを掛け持ちすることはよくありました。そして、「●日までに、こういうデータを出してくれ」という期限付きの実験もしょっちゅうでした。実験をキツキツに詰め込みますので、実験ノートに気を使う暇はありません。「実験ノートの書き方」の項目の一つもクリアできませんでした。電子データはたまる一方。メンバー全員がそれぞれ電子ファイルに実験の中身が分かるように丁寧に名前をつけ、管理していましたが、それでも「あのデータはどこにある?」という会話がしょっちゅう出るほど複雑なものでした。

私が妊娠し、産休にはいるために退所する際、せめて第三者がちゃんとトレースできるようにと思い実験ノートと実験データを照合させ、報告書としてまとめましたが、時系列に書かれた実験ノートは内容が散在し、とてもじゃないけれどそのままでは閲覧するには骨が折れると思い、実験ノートを全てコピーし、内容順に整理しなおし、報告書に添付して、オリジナルの実験ノートとともに引き継ぎをしました。

なんと無駄の多いことかと、いまだに後悔しています。

 

これが実務での現実です。

 

そろそろ見直そう!?実験ノートの立場。

 

私の経験談がずいぶん長々と入ってしまいましたが、この「正しい(とされてきた)実験ノートの書き方」の問題点をまとめてみます。

 

● 生データが膨大。しかも電子データ。

生データ、というのは、機器分析などで得られる数値データや画像データです。一つの生データでは意味を成さないことがほとんどで、これを表計算ソフトなどでグラフ化したり、複数の生データを比較することで初めて可視化できる「結果」になります。例を挙げると、私が使用していたHPLCという装置の生データは、ある一つの実験につき、プリントアウトするとA4サイズで10~20枚になります。顕微鏡写真は、画像ファイル数でいうと、一つの実験につき30~50枚。基本的にはその中から必要と思われるものを別のデータファイルで整理して配置したりグラフ化したりして実験結果とします。

実験ノートにこれらすべてを添付することは、ぜひ避けたいところです。

 

●時系列で記入することと、一連の実験が分断しないようにする、は両立できない。

特にバイオの実験でよくあることですが、「ある反応を開始し、6時間後、24時間後、72時間後に測定を行う」や、「3週間菌体を培養し、実験に用いる」、「分析装置で連続分析をしかけて、結果は24時間後に出る」といった場合、当然、待ち時間に何もしていないわけではなく、別の実験(同じテーマだったり違うテーマだったり)を組みます。すると、実験ノートに時系列で記入しようとすると必然的に一連の実験が分断しますし、一連の実験が分断しないようにすれば、時系列での記入はできないので、実験が完了してから後でノートを記入することになります。

 

●1つの実験で考察に至らない。

1つの実験で得られる結果は、わずかなものです。条件を変えながら複数回実験をして、比較をして、初めて結論や考察に至ることがほとんどです。実験タイトル、目的から考察までそろえたいところですが、考察に至るまでに、数週間~数か月かかってしまい、せっかくタイトルや目的を書いても、考察は離ればなれ、ということはよくあります。

 

●そもそも実験ノートを実験室に持ち込めない!

私は放射性同位体放射能をもつ物質のこと)を使用した実験をしていたことがありますが、そういった実験室には実験ノートを持ち込むことはできません。というのも、万が一実験ノートが放射性同位体で汚染されたら、そのノートは廃棄しなければならないからです。こういう実験室には、プロトコール等をプリントアウトした紙を持ち込み、実験ノートに後で貼り付けたり転記することになります。

放射性同位体を使用する部屋の他、遺伝子組み替え体を使用する部屋、クリーンルームなどにも実験ノートは持ち込めません。

 

9割方PC上に存在するものを、ノートに転記・添付するという現実

 

上記にもすでにちらほら出てきましたが、一番の悩みどころが、「実験ノートに記載すべき内容のほとんどが、PCから吐き出されるもの」という事実です。いまどきのラボのデータはどういうものかというと・・・

 

  • 生データはほとんどが電子データ。
  • グラフは表計算ソフトで作成。
  • スケッチはほとんどしない→写真などのデジタル画像が大半
  • 実験計画書や報告書はPCで作成。実験題目も目的も実験プロトコールも、PCで作成。
  • 当然、議論はパワーポイントなどのスライド、論文は文書作成ソフト。
  • これら電子データには、「作成日、編集日、編集者」などの情報が自動で残る。

 

これらをわざわざプリントアウトして、ノートに貼ることに意味はあるのでしょうか?

そもそも実験ノートは必要かという議論も起こりつつある現在ですが、実験プロトコール通りに操作をしたらチェックを入れる、とか、実験しながら得た知見をその場で記入する、等の手書きの情報は重要で欠かせないことだと私は思っています。

 

 

これらの現実を踏まえて今、新しい実験ノートの有り方の模索が盛んにおこなわれています。

Wikipediaでは、「実験ノート」の項目は日々更新されていますし、実験ノートの発注が多くて納品までに一ヶ月もかかるという事態になっています。それだけ実験ノートの有り方は今、注目されていて、活発に議論されているところなのだと思います。

 

次回は、私なりに考えた「実験ノートを含めた研究データの統括管理の方法」を恐る恐る提案してみたいと思います。

 

 

 

 

参考資料:

 

 

*1:Good Laboratory Practice、信頼性確保のための基準

「実験ノート」なるもの-第2回 実験ノートってなに?

 

こんにちは、コガです。

唐突に始まった ”「実験ノート」なるもの” シリーズ第2回です。

STAP問題でそのワードが広く知れ渡った、「実験ノート」とはどのようなものか、今回はかみ砕いて説明しようと思います。実験ノートというものの面倒くささを感じてもらえたらと思います

 

実験ノートってどんなもの?

まずは、実験ノートは何か?前回も書きましたが重要なのでもう一度。

 

実験ノートは「実験の証拠であり、その組織(ひいては全世界の科学技術)の財産となるべきもの」で、「いつ、だれがどのような実験をし、どのような結果が得られたか。」という内容を、「第三者が実験ノートに従って実験したら、同じ結果が得られる(再現性の確保)」レベルで書きます。また、特許論争や内容の信頼性確保のために、「改ざんできない形で書きます。

 

実験の証拠、組織の財産なので、基本的に実験ノートは研究室で保管され、書いていた人が卒業または退職するときは、その研究室に置いていきます。書きかけのノートも、研究室内ではだれでも閲覧できるようにしておくことが望ましいです。

すでに、学校の授業で使うノートとはまったく違いますよね。

「いつ、だれがどのような実験をし、どのような結果が得られたか」を書くものなので、日付と記入者・実験者名が必要です。そして、一番面倒なのは、「同じ結果が得られるように」書くことです。それには、実施した手順はもちろん、使った試薬の情報(メーカー、ロットナンバー、ものによっては開封日や保管場所)や、測定機器の情報(機器名、測定条件)、使った容器の材質や大きさ等も記入しなくていはいけません。

そして、「改ざんできない形で」記入する、ということは、消えないボールペン(黒か青)などで記入すること、測定結果等を貼り付けする場合は全面をのり付けして割り印を押すこと、誤記を訂正する場合は元の文字が読めるように二重線を引き、「”誤記訂正”、日付、訂正者のサイン」を記入すること、各ページに記入者のサインと確認者のサインをすること(ダブルチェック)、などが挙げられます。

これでやっと、行った実験に対して信用が得られるのです。

(厳密には、さらにこれらノートやデータを公証役場等に持って行って、日付と証明をもらうことで、特許論争等で有効なものになります。)

もちろん、特許や品質管理(ISO、GMP*1)等に関わらない場合はいくつか省略しても良いと思います。といっても、貼り付け資料の割り印や誤記訂正の記述、各ページのサインくらいでしょうか。使った容器の材質や大きさなんて一見どうでもよさそうですが、実験には重要です。容器の材質によって、ある成分が容器に吸着したりして、まったく違う結果になることがあるからです。

研究に携わるみなさん、できていますでしょうか?

ちなみに、私の大学時代のノートを振り返ったところ、全然できていませんでした・・・。そもそも実験ノートが今、手元にある時点でアウトです。

 

ちなみに、今までのはただの「原則」です。

このうえさらに面倒くさい「正しい(とされてきた)実験ノートの書き方」が存在します。・・・とその話の前に、難しい話ばかり続いてもアレなので、身近な「料理」を題材にして、実験ノート風にまとめるとどうなるか、やってみましょう。

 

味噌汁をつくって塩分濃度を測定したと仮定して、実験ノート風にまとめてみる

 

料理と実験は似ていると良く言われますので、料理を実験ノート風にまとめてみます。

作るのは日本の家庭料理の友、お味噌汁。具は豆腐とわかめとわけぎにしましょう。「結果」と「考察」が欲しいところなので、仮に塩分計で塩分濃度を測定したことにしてみます。

 

【実験日】2014.x.xx
【実験者】■■■■
【実験題目】味噌汁を調理し、塩分濃度を測定する。
【背景、目的など】味噌汁は一般的に塩分濃度1%と言われており*2仮に1食あたり150 mLを三食とると4.5 gとなる。塩分の摂取量は1日8~10 g以下が望ましい*3とされているが味噌汁だけでその半分に達する。そこで自宅で普段調理する味噌汁の塩分濃度を測定、把握することを目的とする。

 

【方法】

●素材の準備

  • 絹ごし豆腐(商品名xxx、xxx社製)150 gを、約1 cm角のさいの目切りにした。
  • わけぎ(商品名xxx、xx県産)10 g、約2ミリメートル幅の小口切りにした。
  • 乾燥ワカメ(商品名xxx、xxx社製)を5 g秤量した。
  • 味噌(赤白合わせみそ、商品名xxx、xxx社製、製造番号:xxxxxx、製造年月日:xxxx年xx月xx日)を30 g秤量した。

 

●味噌汁の調理

浄水(水道水を、浄水器(xxx社製、型番:xxx-xxxx)に通したもの)350 mLを、アルミ製の700 mL容片手鍋に入れ、中火(コンロの火力レバーを中央に設定)にかけた。ガスコンロはxxx社製、型番:xxx-xxxxを使用。
  ↓
沸騰したら、顆粒だし(商品名xxx、xxx社製)小さじ1杯を添加し、絹ごし豆腐、わけぎ、乾燥ワカメを加えた。
  ↓
再び沸騰したら、火を止め、おたまで味噌をすくい、少量のゆで汁でおたま上で味噌をといた後、その全量をなべに入れた。
  ↓
汁が均質になる程度に軽く撹拌した。

 

●塩分濃度測定
味噌汁をゆるやかに撹拌しながら、塩分濃度計(xxx社、型番:xxx-xxx)で塩分を3回測定し、その平均値をこの味噌汁の塩分濃度とした。

 

【結果】
塩分計での測定結果 単位は%(w/v)
1回目 0.9 

2回目 0.8

3回目 0.9

平均 0.9

【考察】
ほぼ一般的な味噌汁とされる塩分濃度と同等の値であった。出汁の活用や、具材の増量などにより、汁の摂取量を減らすなどの工夫が必要であろう。

 

※今回は、1回の調理で3回測定しましたが、場合によっては同じ事を3回別の日に行い、合計9回測定精度を確認する必要があります。

※久々にこのような書きかたをしたので、情報に抜けがあったらすみません。。

 

素材(特に味噌)のメーカーが違えば全く違う結果になってしまいます。鍋やコンロが違うだけでも、同じ時間加熱しても水分の蒸発量の違いから塩分濃度が変わってしまう可能性があります。

とはいえ、つねに「測定誤差をどこまで許容するか」との兼ね合いになってきます。測定装置の性能がさほど良くなく、アルミの鍋でもホーローの鍋でも同じ結果が得られる程度なら、鍋の材質までこまこまと言及する必要はありません。この辺の判断は、センスと経験でしょうか。(わざわざ予備実験をして確かめることもあります。)研究しはじめのうちは、こういったことでよく上司に注意を受けるものです。

 

だいぶ長くなってしまったので、さらに面倒くさい「正しい(とされてきた)実験ノートの書き方」については次回にします。

 

 

 

*1:いずれも品質管理基準

*2:信州みそラボwebサイトより  http://www.shinshu-miso.or.jp/research/category/post-2

*3:厚生労働省webサイトより http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/kenkou/seikatu/kouketuatu/meal.html

「実験ノート」なるもの-第1回 STAP問題に触れてみる

 

 

こんにちは、コガです。

今回は突然ですが「実験ノート」について思うところを綴ります。

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 私は研究職に身を置いていたという理由から、STAP問題について聞かれることがよくあります。私は中の人ではありませんし、一部の報道しか見ておらず全貌を把握しているわけではありませんので、当問題についての正否を述べられる立場ではありません。(当ブログでもこれについてはコメントしません)。

ただ、言えることは、STAP問題で指摘された「研究データ管理のずさんさ」については耳が痛い思いをしている人、結構いるのではないでしょうか?ということです。

メディアに対して「自分もずさんな管理してます!」なんて言う人はまずいないでしょう。「こんなずさんさ、同業者として信じられない!」と言うより仕方ありません。「自分はちゃんと管理できている!」という人の中にも、そう信じているだけで管理不十分な方がいるかもしれません。

今回の騒動でドキドキしている方、ちゃんと管理しているつもりでも、実は管理しきれていない方、理系の学生さん、それから、専門外だけどちょっと興味のある方に、ぜひ「研究データの管理」のことを知ってもらえたらなと思っています。

そして、データ管理の方法に、「正しい方法」はありません。組織やデータの質によって適切な方法は異なります。ぜひ様々なご意見を頂けたらと思います。

(実は私、こっそり「研究データ管理の効率化を促進する活動」を行っています。)

 

 

まずはSTAP問題に触れてみる

 

あまり触れたくはありません。というのも、先ほども書きましたが、私は外部の人間なので、正しい情報を十分得られているわけではないからです。多分、街頭でインタビューされても、「さぁ?どうなんでしょうね?内情を知らないので私には何とも言えません」としか言えない気がします。

しいて触れるなら、今回の問題にはいくつかの論点があって、それが報道でも、小保方氏の中でもごっちゃになっているということ。

少し整理してみましょう。

 

STAP問題でなにが問題なのかというと・・・、

STAP細胞は本当にできたのか?」ではありません。これは私たちにとって一番気になるところですが、これは学術論文が正しく公開されたとしても、その論文を受けて専門家たちが検証実験をしたり議論をしたりしながら、最終的に実用化されるまで、厳密には結論が出せないことです(と私は思っています)。

STAP細胞ができた」ということを「示唆」するデータが出た時点で論文が提出される、つまり、「たぶんこれ、STAP現象だよね?みんな見てよ!どうかな?」というのが論文です。ですから、他の科学者が学術論文を見て、「この論文の言い分はちょっと違うよね」ということはよくあります。

 で、話をもとに戻して、STAP問題で何が問題なのかというと、

1) 論文作成時に誤ったデータを掲載したこと、データの切り貼りを(編集)したこと。

2) (1)を受けて、本来起こり得ない現象を作り出すなどの悪意があったかどうかの調査のために元のデータをみたが、小保方氏にしか理解できないようなデータ管理であったために、第三者にはデータのトレースが出来ず、悪意があったかどうかも判断できなかった(ようだ)。

 ということでしょう。

 (1)は小保方氏本人の問題ですが、(2)はどの研究機関でも頭を悩ます問題です。

理研の会見でもコメントしていましたが、研究データは「膨大」です。

一日に何十枚と顕微鏡写真が出たり、何百の解析データを比較したり処理しなくてはならないことはザラにあります。これをまとめ、すべてを管理するにはかなりの労力がかかります。しかも、何よりも、「研究データ管理」には決まりが無い→教育される機会がない、ということです。たいていの場合、組織ごとに独自で行っているのです。

この問題の後、理研でもあちこちの大学でも、データ管理については「十分な教育がなされる必要がある」のようなコメントを聞きます。つまり、今までデータ管理の教育が不足しているという認識を持っているということです。

データ管理のキーパーソンになるのはやはり「実験ノート」です。STAP問題でも、実験ノートが2冊しかなかったとか、日付がない等の報道があり、実験ノートというワードが知れ渡りました。

 

実験ノートってなに?

そもそも実験ノートってなに?学校の授業とかでとっていたノートとどうちがうの?実験したことをかけばいいんじゃないの?という方もいらっしゃると思います。

 

実験ノートというのは、学校の授業で使用するノートとは全く質が異なります。

簡単に言うと、

「実験の証拠であり、その組織(ひいては全世界の科学技術)の財産となるべきもの」です。

どういうことを書くかというと、

「いつ、だれがどのような実験をし、どのような結果が得られたか。」という内容を、「第三者が実験ノートに従って実験したら、同じ結果が得られる(再現性の確保)」レベルで書きます。また、特許論争や内容の信頼性確保のために、「改ざんできない形で」書きます。

ちなみに、ちゃんと実験ノートをつけたら、業務の半分は実験ノート作成で終わってしまうくらい労力のいることです。(これは大問題なので、現在実験ノートの有り方について、電子化などの大きな変革が起こりつつあります。)

 

漠然としていていまいちピンとこないかもしれません。

次回からこの「実験ノート」を中心に解説していきたいと思います。

理系の学生さんはもちろん、実験ノートを書くのが苦手、書き方を知らない方に参考にしていただければと思います